大工職人だった先代が始めた小澤工務店は、地元に根付いたアットホームな工務店として支持されています。「お客様が望む家を建てて、幸せになってほしい」と語る二代目の小澤誠氏は、一人ひとりの要望に正面から向き合い、世界にたったひとつだけの家づくりを手掛けます。
祖父、父、自分、そして息子へ。繋がり続ける大工の道
大工が始めた工務店ということですが、創立からこれまでの経緯をお聞かせください。
大工をしていた父が昭和38年に前身である小澤建築を創業しました。もともと祖父も大工をしていて、私も小さいときからずっと「お前も大工になるんだ」と言われて育ちました。今考えると洗脳みたいなものですね笑。小学生の頃は、作業場で“きざみ”の作業を手伝いながらお小遣い稼ぎをしたりして、大工の道へ進むことに何の疑いもありませんでした。高校進学の際にも、電気系統や機械系も面白そうだなと目移りしましたが、父から「大工になれば何でもできるんだ」と言われ、県立甲府工業高校の建築科へ進んだんです。卒業後は、早く働きたくて就職口を探しましたが、当時は大工で弟子を取る人も少なく、甲府の建設会社へ現場監督として就職しました。４年ほど務めた後に、家業を継ぐため家へ戻り、父から大工職の指導を受け、墨付けなど一通りの作業を身につけたんです。
父の時代はかなり忙しく、職人を３、４人抱えていて、自分の代になっても尽力してくれましたが、プレカットの技術などが進み昔ながらの作業がなくなった背景もあり、今は外注を頼っています。しかし、大工職の技能や設計などの技術は後世に伝えていかなければならないものです。父の言葉で「金を残すより、仕事を残せ」とありますが、私自身はそのためには「人を残さなければいけない」と思っています。現在息子が、建築の大学を出て県外で現場監督をしていますが、想いを引き継いでいければと考えています。
100％注文住宅。地道に話し合いを重ね、信頼関係と家を築いていく
社長自ら図面を引いているとお聞きしました。注文住宅に特化しているのはなぜですか。
父の代からずっと注文住宅一筋です。お客様からの要望を聞いて、一から図面を起こしています。そこから何度も話し合いを重ねて、図面にしても見積りにしても納得がいくまでプランを練ります。多い時には15枚以上描き直すこともありますね。太陽の光を多く取り入れられるようにしたり、風通しや向き、耐震を維持するための壁のバランスは特に大事です。すべてあたり前のことですが、それらを心がけて設計にあたります。
特化しているという意識はありませんが、注文住宅ならではの自由度の高さがあると思います。例えば、規格住宅では玄関の位置などあらかじめパターンが決まっているので、日当たりを考慮する際に向きを変えて対処するところを、弊社であれば、玄関の位置から間取りまで、土地に合わせて図面を変えることができます。ただ、提案できる幅が多すぎるため、すべてを提案しきることは難しいです。そのため、打ち合わせにしっかりと時間をかけ、繰り返し行いお互いの信頼関係を築くことで、納得のいく家づくりができます。じっくり丁寧に一つの家をつくり上げていくスタイル。普通のことだと私は思っていますが、これが弊社の唯一無二の家づくりの魅力に繋がっているのだと思います。
木材が生み出す味わいを楽しむ日本に合った家づくり
木を活かし、人と環境にやさしい家づくりをされていますが、木の良さと木造建築への想いを教えてください。
建築の勉強をする中で展示場を巡ったり、旅行などで出かけていても建物ばかりに目が行くのですが、つくづく日本には木造住宅が合っているなと思うんです。ここのところ林業も見直されてきていますし、幸いにも山梨は緑に恵まれ、豊富な資源があります。せっかくならその資源を活かした家づくりをしていきたいという想いがあります。
さらに、父も昔から木にこだわりを持っていて、よく木の家づくりについて聞かされていました。若いころは、その良さが正直わからず、わざわざ本物の木を使わなくても既製品でも良いじゃないかなんて思っていた時期もありました。しかし、年を取るにつれて、木の一つひとつにも顔があることを知り、木の持つ独特なあたたかさがわかるようになってきたんです。弊社では、１年ごとに点検で施工したお宅へ出向くのですが、伺う度に変っていく床板の色の味わいを拝見することも今では楽しみの一つになっています。そのため、素材にもこだわり、柱と土台には国産ヒノキを、梁には米松を使用しています。デザインとしても、梁を見せる形にして、６寸の大黒柱を１本立てています。若い方だと施工時の反応は薄いですが、私のように年齢を重ねていくにつれてその良さをわかってもらえたらいいのかなと思っています。
