(有)山本建築工業

耐震・耐久性のある家は、30年ほど前の親の代から取り組んでいます。きっかけは、そのような建物の見学会に行ってみたところ、温熱環境の差に衝撃を受けたのが始まりです。その時代に手掛けた高気密・高断熱の建物は、外張り断熱の樹脂サッシペアガラス。今の省エネ義務化より少し良いレベルで、現在、普通に建てられている住宅より、下手すると良いかもしれない家ばかりですが、当時は、高気密・高断熱というワードはおろか、計算方式もなく、断熱性能を示す指標がない時代だったので、お施主様に伝えることが難しかったと覚えています。今でも、高気密・高断熱住宅は、言葉だけが一人歩きして伝わりにくい分野ですが、弊社では、数値を出したり、シュミレーションしたり。それ以外にも、温度DATAや光熱費などリアルな情報をお見せしながら説明して、今ある基準よりも良くするようにしています。
　また、壊れにくく交換できない箇所には良いものを。いずれ壊れてしまうものには取り換えが簡単なものを設置するようにしています。特殊な設備は、壊れた時にお金がかかる上、そのメーカーにしかできないものや廃版になっているものもあるので、“特別なもの”では、最終的にお施主様が困ります。「他社でもメンテナンスができる」ことも、弊社のコンセプトのひとつです。

見えなくて隠れてしまう基本的な部分や、断熱・構造などの仕上がりが分からない部分には、10年先を見越して永く安心して住めるように考えています。また、「家を建てる」となると、どうしても金額だけに捉われがちですが、水道光熱費や住んでいく上でかかるランニングコストも含めてトータルで良くなるよう考えています。断熱性を良くすると冷暖房費は圧縮でき、例えば、暖房を消して就寝しても、朝17、18度の室内温度を保ち、真冬でも春先のような感覚で過ごせるんです。生活に不快感がなく、温度差が少ない住みやすさ、快適さが出てくるのです。加えて、全棟長期優良住宅を標準に、耐震等級３で施工しています。
　見える部分（仕上がりやデザイン）に関しては、それぞれイメージしているものが違う場合が多いので、写真などを参考にお客様のイメージ以上のものが完成できるように心がけています。基本的にはお客様は建築の素人であるので、分からない部分や気が付かない部分があるのが当たり前と思って、使い方や動線など可能性のあるところはヒアリングしながら、後で後悔しないように施工いたします。おかげさまで、幅広い年齢層にはなりますが、デザイン性より本質を見てくれる方が増え、安ければ良いという考えではなく、お金をかけるところにはしっかりとかけて良いものを作りたいという考え方のお客様が多いように思います。

修業して戻ってきた時、やりたいことが中々できなかったことが一つのきっかけです。弊社は昔から、工務店では施工しない基礎工事をやっていた関係で、私自身が他の工事もしていきたいと資格を取得し、大工工事から基礎工事、電気・水道・エアコンや太陽光発電などの設備工事も自社施工で行っています。性能に関わる設備工事の品質が自社でできるようになってからというもの、現場での動線確認後、変更したい箇所が発生した場合、その場で直せるのでコストも下がります。建築士として設計した建物が施工も一緒なら、気密や断熱など性能に関わる部分の設備工事がしっかりとできるので、維持メンテナンスも含めて、大変やり易くなりました。
　パントリー・玄関・洗面などコロナ禍によって使い方が変わってきています。さらに今、太陽光を売る時代から太陽光の電気を自宅で使って、買う電気を減らした方が良い時代にシフトしているようです。そのため弊社では、すでに生活をしているお施主様の声を反映させたり、 エネルギーを節約するため「HEMS」というネットワークで繋げた管理システムを導入しています。「HEMS」とは、売電価格が安く電気代が高くなってきているため、HEMSと連携すると例えば、翌日に晴れ予報であれば、エコキュ－トで深夜電力を使わず、自動的に昼間の発電でお湯をつくったり、照明やエアコンも温湿度センサーで自動的にスイッチが入る設定ができる上、家庭の各場所で使うエネルギーを数値で確認できるため、弊社でもDATAを集めてリアルな電気代を提示し、節電につなげています。これからも、暮らしの未来を今ある技術でサポートしていきます。